8月に入り、猛暑と言われるような日々が続いている地域もあります。
エアコンが効いた室内との温度差で自律神経を崩される方も多いと聞きますので、エアコンが効いている所に行くときは羽織等を持っていくと良いかもしれませんね。
今回のお口のお話しは、高齢者社会と歯に関するお話です。お悩みへの回答と、お口のケアについてご紹介していきます。
Question
介護認定は受けていませんが、80代の母が食事中にときどき口から食べ物をこぼすようになりました。
年を取ってきたら、仕方ないことなのでしょうか?
Answer
年齢を重ねるごとに筋力は衰えていきますが、足腰などと同じようにお口周りの筋力も低下します。
筋力が低下する原因として、加齢にともなう筋線維の減少、活動量の減少が挙げられます。加齢に抗うことはできませんが、活動量を増やすことはできます。
お母様の場合、とくにお口周りの筋肉を鍛えると効果的で、食べこぼしが気になるなら、「口唇閉鎖力(唇を閉じるカ)を強化する筋トレ」を行うのも良いと思います。歯科医院によっては、口唇閉鎖力を測定し数値化できる「りつぷるくん」(松風)という検査機器を取り入れているところもあります。
そういったところで現在の数値を知ることで、トレーニングの目標を立てられるかもしれません。
しかし、そもそもお母様がご自宅にこもって、お出掛けする機会が減ったり、誰かとおしゃべりしたりする時間が短くなってはいませんか?
人と話したり、笑ったり、コミュニケーションをとることでお顔や舌の筋肉は自然と使われます。
何気ない日常生活を見直すことも大切なことでしょう。
それらに加えて、お母様の食事中の姿勢も見てみましょう。
背中が丸まっていると、食べ物を口からのどへ運ぶのに時間がかかり、うまく飲み込めずにこぼれてしまうかもしれません。
椅子に深く腰掛け、床に足を着け、しっかりと踏ん張って体を楽に支えられるようにします。ひじを自然に置けるくらいの高さに机や椅子の高さを設定するのが理想です。
また、しばらく歯医者さんに通っていないということはありませんか?
歯周病で歯がグラグラしたり、入れ歯が合わなくなったりすると、食事がとりにくくなりますので、定期的に受診することをおすすめします。
最後に、食べこぼしとはいえ、単なる加齢変化だけではなく、脳の病気や認知症、パーキンソン病など、病気が潜んでいる可能性もあります。心配であれば、専門家に相談してみてください。
お母様の食事の問題は、きっと改善できるはずですから、前向きに取り組んでみましょう。
~食べこぼしを防ぐためにお口周りの筋肉を鍛える~
(時間や回数は目安になります。)
物足りなかったり、きつかったりする場合には、トレーニングの回数や時間を増減させて適度な疲労感が出るように、そして毎日コツコツと継続してできるように行っていきましょう。
(nico 参照)
歯科衛生士 Y.S
いまや高齢者の4人に1人が認知症または軽度認知障害であるとされています。認知症の根本的な治療方法や、治療薬はまだありません。大切なのは、症状を悪い状態にしないようにしていくことです。
歯科医療は認知症の予防や進行を遅らせるのにとても有用なのです。
歯の本数が20本以上の人に対して歯がほとんどなく、入れ歯を使用していない人の認知症発症リスクは1.9倍という調査結果がありました。歯が健康な人ほど、認知症になりにくい、ということが言えるでしょう。日頃から食事をきちんと摂り、しっかり咀嚼して、食べ物を味わい、美味しいと感じられるような生活を送ることはとても大切です。 口腔ケアをきちんと行い、歯を健康に保つことは、認知症の予防や進行を遅らせることにつながるのです。
認知症になると、症状の進行に伴い歯科医院への通院が困難になってきます。診察や治療そのものが困難になる為、通院可能なうちに、早めにお口の機能を修復し、口腔ケアを維持していくことがとても大切なのです。
歯が欠損しているところには、人工の歯(入れ歯、インプラント、ブリッジなど)を装着し、きちんとかみ合わせができるようにしましょう。また、認知症が進むと、口腔ケアがおろそかになり不衛生になりやすくなります。そのため、歯周病や誤嚥性肺炎などの感染症も起きやすく全身の疾患につながりかねません。
日頃から口の中の清掃方法(歯ブラシ、歯間ブラシ、デンタルフロス)などを歯科衛生士と一緒に管理することが大切です。認知症の方に対して歯科がかかわり、食を支えることが、介護の現場ではとても重要なのです。
高齢者の方々の口腔ケアをしっかりと管理することは、軽度認知障害から認知症への進行を遅らせ、認知症を予防することにつながります。
歯科衛生士 Y.K