お口のおはなし 5月号
全国的に梅雨入りし、雨の季節を迎えました。
この時期はジメジメして寝苦しかったり、温度調節が難しかったり・・・と睡眠の質に関わる問題が多くあります。
今回はそんな睡眠の質を少しでも高めることができる「マウステーピング」のお話しや、6月4日の虫歯予防デーにちなんで「虫歯予防」についてのお話しをしていきます。
健康のためには「良い睡眠」をとることが大切です。ところが睡眠中に口呼吸をしていると、体に取り込める酸素が10~15%くらい減り、睡眠の質が落ちてしまうのです。
この低酸素の状態が長く続くと、睡眠障害や高血圧、不整脈、心筋梗塞、心不全、脳梗塞、糖尿病などの病気のリスクが上がります。
マウステーピングをすると、舌がのどに落ち込まず、気道が広がるので、吸い込める酸素量が増えます。口呼吸で寝ていたかたがマウステーピングをすると、「寝つきが良くなった」「朝の目覚めがスッキリしている」「熟睡感がある」「昼間の眠気がなくなった」「体の疲れが取れている」といわれることが多いそうです。さらにマウステーピングを続けると、血圧や血糖値が下がったり、不整脈が改善することもあるそうです。
睡眠中にトイレに起きる「夜間頻尿」も口呼吸が関係していることがあります。
寝ている時に口呼吸をすると体に入る酸素が減り、脳が低酸素状態になります。すると脳は「体に酸素を増やすため」に、体の中を流れる血液量を増やします。血液量が増えると、今度は心臓に負担がかかってしまうので、寝ているにもかかわらず、体から水分を出すために血液から尿を作ります。これが「口呼吸で寝ていると、夜のトイレの回数が増える」理由です。
マウステーピングをして夜のトイレの回数が減るということは、「脳の低酸素状態が改善された」ということにもなります。
夜トイレに起きる回数が2回以上の高齢者は、1回以下の高齢者に比べて、死亡率が1.98倍になるそうです。
また、男性で前立腺肥大があると膀胱を圧迫して夜間頻尿なるといわれますが、そんなかたでもマウステーピングでトイレの回数が減るので、前立腺肥大だけが夜間頻尿の原因ではないかもしれません。
夜間頻尿は「年のせい」と思われがちですが、小学生でも夜間頻尿になっていたケースがあるそうです。
いびきをかき、夜中に必ずトイレに起きていた小学校3年生の女の子は、マウステーピングでトイレに起きなくなったそうです。
小さなお子さんが口呼吸で寝ていると、夜間頻尿が夜尿症(おねしょ)という形で表れていることがあります。これはお子さんの脳が酸素不足になっているサインです。
歯科衛生士 H.K
マウステーピングとは、夜間睡眠中にお口にテーピングをして鼻呼吸を促進する健康法です。
ドライマウス(口腔乾燥症)とは、「口が乾いている状態」のことです。
お口の中は、唾液で湿っていて、その唾液が、歯やお口の粘膜を守っています。しかし、何かの原因で唾液が出にくくなったり、唾液の量が減ったりして、乾くようになると、ドライマウスになります。
ドライマウスになると、お口の中がヒリヒリしたり、口臭がしたり、むし歯や歯周病が進行しやすくなります。また、味覚障害「味が分かりにくくなる」ことが起きたり、お口の中の細菌が増えるので、誤嚥性肺炎の危険性も高くなります。
ドライマウスの原因は、いくつかあります。
年齢を重ねたり、更年期になると唾液腺の働きが低下します。また、ストレスや薬の副作用、糖尿病やシェーグレン症候群などの疾病や放射線治療後も唾液が出にくくなります。
ドライマウスは、50 代以上の女性に多く、女性ホルモンの影響で唾液が出にくくなると言われています。この年代の方々でもマウステーピングをすると、お口の中が乾かなくなり、ドライマウスが改善することが多いのです。
更年期になるとお口の周りの筋肉が弱くなり口呼吸しがちになります。すると唾液は、出ていても、乾いた空気が口の中に入るので、唾液が蒸発してドライマウスになってしまいます。口呼吸すると、性別年齢に関わらず、ドライマウスになる可能性があります。
お口が乾きやすいという方に「夜寝ている途中で、目が覚めたときや、朝起きたときにお口が乾いていませんか?」とお尋ねすると「寝る前に枕元に水を入れて置いてあります」と仰ることが多いのです。なぜなら、就寝中に口呼吸をしていて、夜、お口が乾くのが当たり前になっているからです。
このような方々もマウステーピングをすると、就寝中に口が乾かなくなり、枕元に水を置かなくてもよくなります。
口呼吸をしているのは、就寝中だけではないので、起きているときもお口を閉じてお鼻から息を吸って、お鼻から出す「鼻呼吸」をするように気を付けていただくと、ドライマウスの予防や改善になります。
また、シェーグレン症候群や放射線治療後で唾液が出にくくなった方にも、マウステーピングをしていただくと、ドライマウスの改善になります。
年齢だから、仕方ないとお口が乾くのを諦めていた方もマウステーピングをすると、お口が乾かなくなることが多く、これは、口が乾くのは、唾液が出なくなったからではなく、唾液は、出ているのに口呼吸をして唾液が乾いてしまい、その結果、口が乾いてしまうことが分かります。
マウステーピングをすると、ドライマウスの予防と改善は、簡単にできて、お口と全身の健康に役立ちます。
歯科衛生士 Y.O
『常在菌』なる生き物をご存知ですか?
読んで字のごとく、常に在る菌のことです。
どこに在るかというと、ヒトの体です。
石けんで洗っても、アルコールで消毒しても、一時的に菌数は減りますが、翌日にはまた元に戻ってしまいます。
そもそも常在菌はどうやって住み着いたのでしょう?従来は、赤ちゃんが母体の産道を通って来るときに初めて母親の菌が住み着くと考えられてきました。しかし、最近では『母親のお腹の中(羊水)に細菌が流れ着き、胎児に感染する』というのが有力説だそうです。
口の常在菌で有名なのが虫歯菌です。虫歯菌は母親から子どもにうつります。だから、母親の唾液(虫歯菌入り)が子どもの口に入らないように、同じスプーンやフォークを使用したり、直箸で親子が食事をすることはご法度とされてきました。ところが、最近では様子が変わってきているようです。「親子のスキンシップを損なってまで母子感染に注意しなくてもよい」と言うのです。
その理由は2つあります。
1つ目は、虫歯菌は母親からもうつりますが、「父親や兄弟、祖父母、友達からもうつる」ことがわかったのです。
どうやってでしょう?有力な説としては、「指を介した感染」です。唾液は指について、指が触れたところにつくのです。それを子どもが触って指をなめ、虫歯菌を口に住まわせるのです。新型コロナ対策と同じことをしない限り、これは防ぎようがありません。
2つ目は、虫歯菌が常在菌となっても「虫歯にならなければそれでいい」という考えです。虫歯菌が住み着いたとしても、虫歯の発症は防げます。そのために頼りになるのが、予防歯科です。
『予防歯科』とは、虫歯などになってから治療するのではなく、なる前の「予防」を大切にする考え方です。
歯とお口の健康を守るため、歯科医院での定期的な「プロケア(プロフェッショナルケア)」と、歯科医師や歯科衛生士の指導に基づいた毎日の「セルフケア」の両方を継続的に行う『予防歯科』を、虫歯にならないために実践することが大切なのです。
お口の健康状態を維持するためにも、ご家族での定期的なメンテナンスをおすすめします
C.S H.W
一言で『虫歯』と言っても必ず削らないと治らないわけではありません。
虫歯の大きさがすごく小さく穴も完全に空いていないような『初期』の状態であればフッ素を上手に活用をすることで維持できることもあります。
聞き慣れていて自分の使っている歯磨き粉にも『フッ素』と書いてある歯磨き粉を使っている方も多いのではないでしょうか。
フッ素と言っても含まれている濃度がとても重要になります。
今の歯の状態を維持する、虫歯の予防をすることを考えると3ヶ月に1回のペースでの歯科検診をおすすめしています。
歯科医院で行うフッ素塗布は「1歳半前後」からはじめることをおすすめします。
個人差がありますが、1歳半前後の子どもの口内は、上下の前歯が4本ずつ生え揃っている状態です。生えたての歯は歯の質が弱く虫歯になりやすい状態である一方、フッ素を効率よく取り込むことが可能です。また、1歳半前後の子どもは離乳食の完了期に入り、幼児食をはじめる時期になります。大人と近い食生活になるので、各家庭の食生活の影響がでる時期といえるでしょう。糖分の多い食生活をしていると、虫歯リスクが高くなり生えたての乳歯が虫歯になる場合もあり注意が必要です。
1歳半前後からフッ素塗布していれば、歯の質が強化され虫歯菌の活動が抑制されるので、虫歯になりにくい口内環境に整えられます。
フッ素は、乳歯が生え揃いだす1歳半前後~永久歯が生え揃う中学生くらいまで続けると虫歯予防に効果的です。
虫歯にはいくつかの段階があります。
①初期虫歯で削らないで問題ない
②穴が空いていて樹脂の材料を詰めて修復する
③削って型を採り詰め物を合わせる
④神経を取り、根の治療を行い被せ物にして歯として使う
⑤歯として保存不可→抜歯
②以降は削らない限り治ることはありません。
虫歯にしない、させないことがとても大事になります。
一緒にお口の健康を守っていきましょう!
TC M.H