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  お口のおはなし  8月号 歯科治療と全身疾患は関係あるの?その1

お知らせ

お口のおはなし  8月号 歯科治療と全身疾患は関係あるの?その1

お口のおはなし

 

 

暑い毎日が続いていますが、みなさんいかがお過ごしですか?

残暑も厳しい日が続きそうなので、水分補給はしっかり行ってくださいね。

 

さて、今月は全身疾患との歯科の関わりについてのおはなしをしていきます。

皆さん、糖尿病という病気はご存知かと思いますが、口腔と深い関係があることもご存知ですか?

\そもそも糖尿病とは?/

膵臓から分泌されるインスリンの作用不足による高血糖のため、血液中のブドウ糖がタンパク質と結合(糖化)し、最小血管障害および動脈硬化を進行させる疾患で、1型と2型に分かれます。

1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞が破壊され、インスリン分泌が枯渇します。インスリン治療が絶対的に必要です。

本来、消化された糖質は血液に運ばれブドウ糖に変化(血糖値が上がる)→膵臓はインスリンを分泌し細胞のブドウ糖の吸収を助けます(血糖値が下がる)。
しかし、不適切な生活習慣などによってインスリンの量や効果は減少します。
そうすると慢性的な高血糖状態へ、これが2型糖尿病です。

食生活の欧米化による脂肪摂取増加および自動車の普及などによる運動不足のためにおこる肥満から、現在の日本全体で1,000万人、予備軍を含めると2,000人以上に達するといわれています

糖尿病には合併症が多くあります。
・網膜症
・腎症
・神経障害
・動脈硬化性疾患
・足病変(感染、潰瘍、壊死)
・歯周病
・認知症

 

\口腔との関連は?/
⑴ 易感染性と創傷治癒不全
高血糖時の口腔内の変化に以下の状態があります。
・唾液分泌量の減少
・唾液および歯肉溝浸出液中のグルコースの増加
・白血球の機能不全
・微小循環不全
・コラーゲンの合成障害
・歯周ポケット内細菌叢の変化

”感染しやすく治りにくい”という状態になります。

⑵糖尿病と歯周病との関係
糖尿病患者の多くが進行した歯周病に罹患しており、歯の喪失や残存歯の動揺をきたし、咀嚼力の低下をもたらすことが知られています。
残存歯の減少は筋肉の萎縮、すなわちサルコペニア※をもたらし、血糖値を悪化させることを示唆しています。
(サルコペニア※
筋肉の萎縮や筋力の低下をきたした状態、特に高齢者で問題になることが多い)

また、血糖コントロールが不良なほど、糖尿病の罹病期間が長いほど、歯周病の進行が早いとされています。
さらに、近年では歯周病は腸内細叢を乱し、インスリン分泌や満腹に関連する消化管ホルモンの分泌にも影響し、血糖値を悪化させます。
また、歯周病による慢性炎症は、炎症性サイトカインと呼ばれるTNF-αなどを増加させ、インスリン抵抗性を増し糖尿病悪化させるとも言われています。

逆に、歯周病を治療すると糖尿病が改善されるとされ、最近のメタアナリシスの結果では、歯周治療により平均でHbA1cが0.4%低下するとされています。
このことから、糖尿病患者においては、特に歯周病のコントロールが重要であると考えられています。

\歯科治療での注意点・対応は?/
治療前に医科の主治医から血糖コントロール、合併症の状況を確認し、高血糖時(随時血糖値300mg/dL・HbA1c>8.0%)、体調不良時(発熱時・尿ケトン体陽性時)には、緊急性の高い場合を除いて、観血処置は行わないようにします。
また、抗血小板薬、抗凝固薬内服時は中止が可能かどうかを医科の主治医に確認します。
食事の有無によって糖尿病治療薬の減量、中止が必要になるので、処置のタイムスケジュール、処置前後の食事の可否について、医科の主治医と連絡をとり、内服薬やインスリン投与量について確認することが必要です。

いかがでしたか?
糖尿病と歯周病はとても深く関わっています。治療を進めていく上で医科歯科連携も大切ですが、患者さんの協力も必要不可欠な疾患です。
少しでも参考になれば幸いです!

次は、虚血性心疾患と口腔の関わりについて、お話していきます。

①虚血性心疾患とは?
血管の状態によって2つに分けられます。

⑴狭心症
・労作性狭心症
動脈硬化などにより冠状動脈に狭窄が起こり血液の流れが悪くなることで起こる。
主に運動時に発作が起こる。
・冠攣縮性狭心症
冠状動脈が痙攣して血液の流れが悪くなることで起こる。主に早朝安静時に発作が起こる。

冠状動脈の流れが悪くなるため、主に運動や重いものを持った時などの労作時、夜間や早朝の安静時に胸の痛み、圧迫感、不快感を自覚します。
ただし、糖尿病を合併して神経障害があると無症状の場合もあります。
症状の維持は5分程度で多くは安静とニトログリセリンの舌下投与で症状が軽快します。

⑵心筋梗塞
冠状動脈が完全に閉塞し血流の途絶が続くことで、血液が流れない心筋が壊死したもの。

狭心症と同じように胸の痛み、圧迫感、不快感を自覚しますが、狭心症よりも持続時間が長く(30分以上のことも)、ニトログリセリンの効果も乏しいです。

②口腔との関連は?

直近6ヶ月以内に心筋梗塞や不安定狭心症(新規発症あるいは発作が増えるなどの症状)があった場合には、主治医に歯科治療が可能かどうか確認します。
歯科治療中に胸痛などを認めた場合には、すぐに処置を中止し、ニトログリセリンの舌下投与を行います。
15分経っても改善しない場合には救急車を要請します。

③歯科治療での注意点・対応
虚血性疾患の患者さんでは、抗血小板薬や抗凝固薬を内服していることが多いため、特に抜歯などの観血的処置の際に確認が必要となります。

いかがでしたか?

歯科とは関係ないだろう、と思われていた方は多いと思います。
しかし、内服されてるお薬の種類によっては、観血処置が出来ない場合もあります。
疾患や内服薬の確認をすることは、円滑で確実な治療を進めていく為にも大切です!

お薬手帳の提示をお願いしていますので、歯科医院への通院の際には携帯してください

もし、お身体や内服薬に変わりがあれば、お声がけ下さい。

次に、慢性腎臓病(CKD)についてです。

腎臓が本来の機能を慢性的に果たせなくなった病態です。
正確な定義は尿タンパクあるいは糸球体濾過量の低下が3ヶ月以上持続するもの、主な原因は糖尿病と高血圧です。
糖尿病の40%以上がCKDを発症するといわれています。CKDになると脳卒中、心筋梗塞、心不全、そして死亡リスクが上昇します。

また時間とともに進行し、最終的には腎臓がほぼ機能しなくなります。これを末期腎不全といい、代替療法として透析や腎移植が必要となります。
透析は尿毒症の原因となる有害物質や水分を人工的に除去する方法です。透析には血液透析と腹膜透析がありますが、わが国では殆どが前者です。糖尿病の罹患率上昇を背景に、透析患者は年々増加しています。

診療時に配慮すべきこと
CKDの原因が糖尿病であれば、糖尿病への配慮も必要です。
歯科処置は透析の翌日とする
②循環動態が不安定であるため、高血圧と低血圧に注意する
③血圧測定のカフはバスキュラーアクセスのない腕に巻く
④感染症に対するスタンダードプリコーションを行う
⑤出血傾向を示す場合があるため、止血に注意する。
⑥体位変換は段階的に行う

糖尿病をともなう患者さんの治療方法が変更になり、腎不全への進行を遅延される薬剤が用いられるようになりました。
①ライフスタイルを変更(食事、禁煙など)する
②第1選択薬(SGLT2阻害薬、メトホルミン、RS阻害薬、スタチン)を投与する
③心臓と腎臓を保護するための薬剤(GLP1-RA、抗血小板薬、非ステロイドMRA)を追加投与する
④追加的危険因子を管理(脂質、血糖、血圧のコントロール)する

歯科診療で避けること
もっとも重要な点は、歯科医療行為により残存する腎機能を低下させないことです。
NSAIDSの投与はできるだけ避ける必要があります。

 

このように、お口の健康を維持することは、全身的な健康を維持することにも繋がっています。

早期発見・早期治療は大切です。

症状がなく進行することもありますので、何もなくても検診を受けることは健康維持に必要ですね。

なにか気になることや、お困りの際は医師やスタッフに声をかけてくださいね。

来月は、脳血管障害・高血圧・心房細動についてのおはなしを予定しています。

 

入間郡三芳町ユナイトみよし歯科

歯科衛生士  Y.K&M.S

 

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