お口のおはなし 第38話 骨粗鬆症になると、あごの骨も弱くなるの?
お口のおはなし
●「骨粗鬆症」とは?
骨粗鬆症は、「骨強度(骨密度と骨の質)の低下によって、骨折リスクが高くなる骨格の疾患」です。
骨粗鬆症には、閉経期以降の女性や高齢の男性に多くみられる「原発性骨粗鬆症」と、
若年者でも、栄養不良や運動不足、ステロイド(副腎皮質ホルモン)などの影響で罹患する
「続発性骨粗鬆症」があります。
いづれも日常のライフスタイルが大きく影響することから、歯周病と同様に、
生活習慣病の1つと考えられています。
骨量は、20~40歳ごろをピークに、加齢とともに、
おもに骨の中のカルシウムの減少に伴って生理的に減少していきます。
特に女性では、閉経後5~10年の間に年間骨量減少率3%以上という急速な減少が起こり、
10年間の減少率は20%を超えます。
高齢化に伴って骨粗鬆症患者は増加しています。
しかも、特に自覚症状もなく進行することから骨折が急増し、
この骨粗鬆症による骨折は、脳卒中、老衰についで、寝たきりとなる原因の第3位です。
骨密度が高まるのは小児期、思春期、青年期などの発育期のみですから、
その時期に十分な運動と栄養バランスを心がけることが大切です。
●歯周病と「骨粗鬆症」の関係
骨粗鬆症の自覚症状のない閉経後の歯周病患者を調査したところ、
腰椎骨委縮が進行している歯周病患者ほど歯槽骨吸収が高度で、
プロービング時の出血が高率となり、歯周病活動度が高い傾向を示していました。
●骨粗鬆症の「歯周炎」への影響とメカニズム
閉経後骨粗鬆症は、閉経による卵巣機能の低下によって発症し、
女性ホルモンであるエストロゲン分泌の低下に起因します。
エストロゲンは、骨代謝調節因子としてのサイトカイン分泌に影響を及ぼします。
閉経後の女性では、歯周炎の進行過程において、エストロゲン欠乏により、
顎骨の歯槽骨骨密度も減少し、歯周ポケット内では、T細胞やB細胞の異常、
サイトカインなどの異常亢進を促し、発症した歯周炎の進行が助長されます。
更年期中は、口腔の灼熱感、口腔乾燥症、味覚の変化、口内炎などの症状が起こりやすく、
いままでよりもプラークによる歯肉出血が起こりやすくなること、
慢性歯周炎が放置されることにより、より進行が加速されやすくなります。
●骨粗鬆症治療の口腔への影響
骨粗鬆症の薬物治療であるホルモン補充療法(HRT)、
選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)、
ビスホスホネートなどにより、発症した歯周炎の進行過程が抑制される可能性が示唆されています。
しかし、ビスホスホネートを投与している患者さんへの、
抜歯などの処置による難治性の顎骨壊死の可能性も示唆されているため、
内科主治医と相談のうえ、慎重に対処する必要があります。
●パノラマX線写真で早期発見・早期治療
顎全体が総覧できるパノラマX線写真は、顎関節、歯やその周囲の歯槽骨などを診断し、
歯科疾患の治療に不可欠なものです。
このパノラマX線写真上のオトガイ孔下部の下顎骨皮質骨指標が、
閉経後骨粗鬆症患者のスクリーニングに非常に有用であるという報告もありますので、
早期発見・早期治療につながるかもしれません。
※定期的な歯科検診により、全身の健康のための歯周病管理(予防、治療)が重要です!
※ご予約をお待ちしております。
埼玉県入間郡三芳町藤久保855-403
ユナイトみよし歯科
歯科衛生士 H.K